「技術・人文知識・国際業務」に日本語要件?―1月の閣僚会議資料から考えるこれからの在留資格制度
はじめに
2026年4月現在、一部報道で、在留資格「技術・人文知識・国際業務」について、日本語能力を取得要件とする方向で政府が検討しているとのニュースが出ています。
もっとも、現時点では正式決定ではありません。
この情報だけを見ると、「本当にそこまで変わるのか」と感じる方もいると思います。しかし、昨今の政府の動きを踏まえると、今回の話は一貫した流れの中に位置付けることができます。
昨年は「経営・管理」の在留資格について、上陸基準省令等の改正により要件が強化され、また「永住者」の在留資格についても、2026年2月にガイドラインが改訂され、審査の運用がより厳格化されました。
さらに、2026年1月23日決定の「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の資料を見ると、政府は「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」、「永住者」等、個別の在留資格ごとに、適正化を進める方向を明確に打ち出しています。
つまり、今回の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に関する日本語要件という話も、突然出てきたわけではありません。
在留資格については、「形式的に要件を満たしているか」ではなく、「実態として日本社会に適合しているか」を、より見定める方向へ舵を切っていると言えるでしょう。
「技術・人文知識・国際業務」の日本語要件
今回報じられたのは、「技術・人文知識・国際業務」について、日本語を使う業務に従事する場合には、一定の日本語能力を求める方向で政府が検討しているというものです。
現時点では、入管法の改正や正式な省令改正が行われたわけではありません。しかし、今後、審査基準や運用指針の変更によって、日本語能力がより重視されるのはむしろ当然の流れとも言えます。
もっとも、重要なのは日本語能力そのものではありません。
政府の資料を見ると、「技術・人文知識・国際業務」に限らず、在留資格制度全体について、
・在留資格に合った活動を本当にしているか
・日本の制度やルールを理解しているか
・納税や社会保険料の支払いを適切に行っているか
・継続して適切に活動しているか
といった点をこれまで以上に重視する方向性が示されています。
したがって、今回の「技術・人文知識・国際業務」に関する日本語要件に関しても、日本語能力そのものだけを問題にしているのではなく、「在留資格と実態が合っているか」を、より重視していく流れの一部と考えられます。
1月の閣僚会議資料から見える、3つの方向性
1.これまで以上に「実際に適切に活動しているか」が重視される
1月の閣僚会議資料では、「技術・人文知識・国際業務」について、資格該当性のない業務に従事させている疑いのある受入機関や派遣先を調査し、審査を厳格化するとともに、許可の在り方自体を検討するとされています。
「技術・人文知識・国際業務」については、当然、これまでも実際の業務内容等は審査されていました。
しかし今後は、資格該当性のない業務に従事していないか、受入企業や派遣先の実態も含めて、より厳しく確認される方向が示されています。
例えば、名目上は「通訳」、「営業」、「技術職」として在留資格を取得していても、実際には現場作業や単純作業が中心となっているようなケースや、異動や配置転換により現在は別の業務を行っているケースについては、今後、より問題視される可能性があります。
2.「継続して適切か」がより重視される
今回の資料では、「経営・管理」についても、在留中の事業実態や、公租公課の履行状況を把握し、更なる改善方策を検討するとされています。
また、「永住者」についても、審査を厳格化するだけでなく、取消しのガイドライン整備や、日本語・制度理解を求める方向まで示されています。
この点からは、在留中の活動、法令遵守等について、これまで以上に確認される方向に進んでいることがわかります。
3.日本語・税・社会保険・ルール理解まで含めた「総合的な確認」へ
1月の閣僚会議資料では、「永住者」について、日本語や日本の制度・ルールを学ぶプログラムを創設し、その受講や理解状況を、審査や在留管理における考慮要素とすることが検討されています。
また、入管庁が、税金、健康保険、年金、地方税等の情報を、関係機関から受け取る仕組みを整備する方向も示されています。
これらは、「永住者」に限らず在留資格制度全体について、税・社会保険・日本の制度やルールへの理解といった点を、これまで以上に重視していく方向性を示すものと言えるでしょう。
その意味では、「技術・人文知識・国際業務」について、日本語能力をより重視する方向が示されていることも、突然の話ではありません。
今後は、
・在留資格の種類に合った仕事をしているか
・税金や社会保険料を適切に納めているか
・日本語能力や、日本の制度・ルールへの理解が十分か
まで含めて、より総合的に確認される方向が政府資料から読み取れます。
「技術・人文知識・国際業務」に関して、「日本語能力を要件にする」という話だけを見ると、外国人本人の問題のように見えるかもしれません。
しかし実際には、企業側も、「どのような人材を、どのような業務で、どのような体制で受け入れているか」が、これまで以上に問われる時代になっていくと考えます。
企業は、今から何を見直すべきか
外国人を雇用している企業、これから採用を考えている企業は、今のうちから、次の点を確認しておく必要があります。
・外国人社員の実際の業務内容は、在留資格と合致しているか
・「技術・人文知識・国際業務」で採用しているが、実際には現場作業が中心になっていないか
・採用当初は在留資格に合った業務であっても、異動や配置転換により、現在は別の業務を行っていないか
・雇用契約書や職務内容書、就業規則は、実態と合っているか
・社会保険や税の加入・納付に漏れはないか
・外国人本人に対し、日本語や制度・ルールについて、必要な説明や支援ができているか
そして今後は、「在留資格を取得できたか」のみならず、「取得後に、在留資格に合った業務を継続して行っているか」がより重視される可能性があります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」で採用したものの、実際には現場作業や単純作業が中心になっている、採用当初は在留資格に合った業務であっても、異動や配置転換により現在は在留資格と合致しない業務を行っている、雇用契約書上の職務内容と実際の業務が異なっている、日本語能力や制度理解に十分な配慮がされていない、といったケースは、将来的な在留期間更新許可申請等で問題となるリスクがあります。
在留資格は、取得して終わりではありません。
むしろ、その後の業務内容、労務管理まで含めて、在留資格と実態が合致している状態を維持し続けることが重要です。
おわりに
1月の閣僚会議資料を見る限り、政府が、在留資格制度全体について、業務内容、納税、社会保険、日本語能力、日本の制度・ルールへの理解といった点を、より強く、より継続的に確認する方向に進もうとしていることは、かなり明確です。
当事務所では、在留資格の取得・変更・更新手続きだけでなく、外国人雇用における職務内容、就業規則、雇用契約、社会保険、実際の業務運用まで含めて確認し、「在留資格と実態が合っているか」を継続的にサポートしています。
「外国人社員を雇い続けるに当たって、この運用で問題ないだろうか」、「将来の更新許可申請を見据えて、今のうちに見直しておいた方が良いことはないか」といった点については、お気軽にご相談ください。
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