2026年4月から被扶養認定は「労働契約ベース」に―130万円の壁と契約書類の重要性

はじめに

2026年4月1日より、健康保険の被扶養者認定における年間収入の取扱いが変更されます。

この取扱いは、令和7年10月1日付の厚生労働省通知によって示されており、
令和8年3月9日付でQ&A(第2版)も発出されました。
いわゆる「130万円の壁」に関する実務にも影響がある内容であり、本記事では変更のポイントと企業実務への影響について整理します。

変更の概要

従来、被扶養者の年間収入の判定は、

・過去の収入
・現時点の収入
・将来の収入見込み

等を総合的に判断する方式でした。

そして今回、就業調整への対応や被扶養者認定の予見可能性を高める観点から、労働契約の内容(時給・労働時間・日数等)から年間収入を算定する方式へ変更されます。

残業代等の「臨時収入」は原則含まれない

労働契約に明確な規定がなく、契約段階では見込み難い時間外労働に対する賃金等(臨時収入)は、年間収入の見込額に含まれません。もっとも、固定残業代や毎月支給される手当等、労働契約上あらかじめ予定されている賃金は、年間収入に含まれます。

契約内容が不明確な場合は従来方式へ

以下のような場合は、労働契約による判定ができないため、給与明細書・課税(非課税)証明書等による従来方式で判定します。

・シフト制によるなど労働時間の記載が不明確な場合
・契約期間が1年に満たない場合
・労働条件通知書等の提出がない場合

複数事業所勤務の場合は合算判定

複数の事業所で勤務している場合は、各事業所の労働条件通知書等に基づき個別に算定した上で合算して判定します。

ただし、いずれか一社でも労働契約内容による算定ができない場合は、全体として従来方式(給与明細書・課税(非課税)証明書等)による判定に戻ります。この点は実務上注意が必要です。

基準額は原則130万円

基準額は原則130万円ですが、以下の場合は異なります。

・60歳以上または一定の障害者:180万円
・19歳以上23歳未満(被保険者の配偶者を除く):150万円

認定後の確認(定期チェック)について

認定後1年以内は確認不要ですが、2年目以降は少なくとも年1回、保険者(協会けんぽ、健康保険組合等)において被扶養者の認定の適否が確認されます。
確認にあたっては、その時点における最新の労働条件通知書等の提出を求められることになります。ただし、認定から1年経過後であれば、保険者は、実際の年間収入との乖離を確認するため、給与明細書・課税(非課税)証明書等の提出を求めても差し支えないとされています。

なお、労働契約の更新や労働条件の変更があった場合は、その都度、内容が確認できる書面の提出を求めるとされている点も注意が必要です。

不正への対応について

臨時収入によって結果的に年間収入が基準額以上となった場合でも、それが社会通念上妥当な範囲であれば、認定は取り消されません。

一方で、労働条件通知書等において賃金や労働時間を不当に低く記載していたことが判明した場合等、制度を悪用する形での申請については、認定取消しの対象となり得ます。

企業としては、労働条件通知書等の記載内容と実態が乖離しないよう、適正な管理が求められます。

企業実務への影響

今回の変更で、労働条件通知書等の記載内容の正確性、重要性が増したと言えます。

具体的に確認すべき点としては、

・時給・労働時間・労働日数が明確に記載されているか
・シフト制の場合、可能な限り具体的な時間数が記載されているか
・諸手当・賞与の規定が契約書上明確になっているか
・労働条件の変更・更新時に書面を都度整備できているか

といった点が挙げられます。

労務管理を見直す機会にも

今後は、労働条件通知書や雇用契約書の記載内容の正確さ、契約更新・変更時の書面整備の適切さの重要度が増します。

もっとも、被扶養認定のためだけでなく、日頃の労務管理の基礎となる書類として、契約書類の整備・運用はやはり大切です。
今回の変更は、被扶養者認定への対応にとどまらず、自社の契約書類や労務管理のあり方を見直す契機にもなるでしょう。

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