中小企業の就業規則―形骸化のリスクと運用のポイント

はじめに

就業規則を作成したものの、実際にはほとんど運用されていないという会社も少なくありません。

「とりあえず整えてはある」、「何かあったときに確認すればよい」という位置づけで、就業規則が形骸化してしまっているケースも多いと感じます。

ただ、就業規則は、やはり適切に運用されてこそ意味を持ちます。

形骸化した就業規則のリスク

就業規則が適切に運用されない状態が続くと、実務上、規律として十分に機能しない状態になることがあります。

例えば、規則上は定めがあるが、実際には誰も意識していない、指導や注意はすべて口頭対応で行われている、その場その場の判断が積み重なっているといった状態が続くと、いざ問題が起きた際に就業規則を根拠としようとしても、十分な説得力を持たせることが難しくなる場合があります。

また、運用実態が長期間継続していた場合には、労使慣行として評価され、規定の解釈や適用に影響する可能性もあります。

形骸化した就業規則は、会社を守るどころか、リスクを招く要因となることもあります。

懲戒規定は、いざというときのためだけにあるわけではない

就業規則の中でも、特に使われにくいものが懲戒に関する規定です。

・揉め事になるので懲戒はできるだけ使わない方がよい

・重い対応になるのではないか

・懲戒は従業員にとって可哀そう

このような意識から、懲戒規定が存在していても、実際には一度も使われていないという会社もあります。

ただ、懲戒は必ずしも重い処分だけを意味するものではありません。

軽微な懲戒は、どのような行為が問題だったのか、どこに線を引いているのか等を会社として明確に示すための手段にもなります。

懲戒をまったく使わない状態が続くと、注意や指導が曖昧になり、また、後になっていきなり重い対応を検討せざるを得なくなる場面も出てきます。

就業規則の運用は、経営の腕の見せ所

就業規則は、規定の記載通りに機械的に適用すればよいものではありません。

一方で、その場その場の判断だけに委ねてよいものでもありません。

どこまでを原則とし、どこからを例外とするのか等、規定文の解釈や基準が整理されているかによって、就業規則を合理的に運用できているかは分かれます。

就業規則の運用は、経営の腕が問われる場面だと言っても過言ではありません。

就業規則は「判断を代替するもの」ではない

ただ、就業規則があるからと言って、経営者が何も考えずに済むわけではありません。
最終的な判断は、やはり経営者が行う必要があります。

そして就業規則は、判断の拠り所、立ち戻る基準、説明のための労使の共通言語として機能します。

就業規則は経営判断を代替するものではなく、判断を整理するためのツールとも言えます。

おわりに

就業規則は、どのように運用されているかによって意味合いが大きく変わります。

ある事項に関して、就業規則に規定されていても、実際には適用されていなかった場合、いざというときに、その規定が十分に機能しない可能性があります。

日頃の運用も含めて、どのように扱われているかという点は重要です。

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