外国人材の採用で在留資格手続が完了していない場合の注意点―入社日から働けるとは限らない理由
はじめに
外国人材を採用する場合、本人の現在の在留資格や従事させる業務内容によっては、就労開始前に在留資格に関する手続が必要になることがあります。
例えば、海外にいる外国人を日本に呼び寄せる場合には、在留資格認定証明書交付申請を、また日本にいる留学生を採用する場合には、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」等の就労系在留資格への変更許可申請を行うことが一般的です。
在留資格手続では、本人の学歴・職歴、採用後の職務内容、雇用条件、会社の事業内容等に関して審査が行われます。
ここで実務上問題となりやすいのが、雇用契約上の入社日までに、必要な在留資格手続が完了していないケースです。
・「入社日を迎えたが、まだ許可が下りていない」
・「本人はすでに卒業してしまっている」
・「資格外活動許可があるので、ひとまず働かせてもよいのではないか」
このような相談を受けることもあります。
今回は、外国人採用において、在留資格手続が入社日までに間に合わない場合の注意点を取り上げます。
入社日と在留資格手続の完了日は一致するとは限らない
外国人を採用する場合、会社と本人との間で雇用契約を締結します。その際、契約開始日、入社日、就労開始日等を定めます。
しかし、雇用契約上の入社日と、在留資格手続の完了日、つまり就労可能になる日は必ずしも一致するわけではありません。
在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請では、本人の経歴、職務内容、会社の事業内容、雇用条件等が確認されます。
会社のカテゴリー区分、提出資料の内容、事業内容や職務内容の説明状況等によっては、審査に時間を要することがあります。
特に、カテゴリー3やカテゴリー4の会社では、会社の事業内容や安定性・継続性、職務内容との関係等について、より慎重に確認されることがあり、想定より審査期間が長くなることがあります。
その結果、雇用契約上の入社日が近づいている、あるいは入社日を迎えたにもかかわらず、まだ在留資格手続の結果が出ていないということが起こります。
在留資格手続が完了していないのであれば働かせてはいけない
重要なのは、必要な在留資格手続が完了していない段階では、業務に従事させてはいけないという点です。
雇用契約を締結していることと、実際に働かせることができることとは別の問題です。
業務に従事するために就労系の在留資格が必要であるにもかかわらず、まだ必要な許可が下りていない場合には、会社は就労を開始させることはできません。
例えば、留学生を採用し、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可申請を行っているケースでは、入社日までに変更許可が下りていない限り、職務に就かせないよう注意が必要です。
「すでに雇用契約を結んでいる」、「入社日を迎えている」、「本人も働く意思がある」という事情があっても、在留資格上、その業務に従事できる状態になっていなければ、働かせることはできません。
自宅待機や入社日の取扱いは別途検討が必要
在留資格手続が完了していない場合、会社としては、本人を自宅待機させる、入社日を変更する、契約開始日を調整するといった対応を検討することになります。
ただし、ここでは労務上の論点も生じます。
例えば、すでに雇用契約が成立し、契約開始日を迎えている場合に、会社側の判断で就労させないときは、休業手当等の問題が生じる可能性があります。
一方で、労働条件通知書や雇用契約書等において、必要な在留資格の取得または許可を就労開始の条件としている場合には、その在留資格を取得していない、または必要な許可が下りていない段階では、就労開始の条件がまだ満たされていないと考えられることもあります。
その場合には、直ちに休業手当等の問題になるとは限りませんが、労働条件通知書や雇用契約書の記載、契約開始日と就労開始日の定め方、在留資格手続の進捗等を踏まえて、個別に確認する必要があります。
在留資格の問題と労務管理上の問題は、別々に見えるようで、実務上は密接に関係します。
留学生を採用する場合の注意点
特に注意が必要なのが、留学生を採用するケースです。
留学生が在学中に資格外活動許可を受けている場合、一定の範囲内でアルバイト等を行うことができます。そのため、「資格外活動許可を受けているなら、在留資格の許可が下りるまでの間、とりあえず働かせてもよいのではないか」と誤認されるケースがあります。
しかし、この点は注意が必要です。
出入国在留管理庁のQ&Aでは、留学生に対する包括的な資格外活動許可は、教育機関に在籍している間に限り有効であり、卒業後、いずれの教育機関にも在籍していない場合には、アルバイトをすることは認められないとされています。
つまり、卒業後も在留カード上の在留期限が残っているからといって、当然に資格外活動許可によるアルバイト等ができるわけではありません。
「留学」の在留資格は、教育機関に在籍して教育を受ける活動を前提としています。そのため、すでに教育機関を卒業し、いずれの教育機関にも在籍していない場合には、「留学」の活動に伴う資格外活動としてアルバイト等を行うことはできない点に注意が必要です。
おわりに
外国人採用では、雇用契約上の入社日と、在留資格手続の完了日、就労可能となる日がずれることがあります。
入社日を迎えていたとしても、必要な在留資格を有していなければ、予定している業務に従事させることはできません。
特に、留学生を採用する場合には、卒業後もまだ在留期限が残っていることや、資格外活動許可を受けていることだけで判断しないよう注意が必要です。
在留資格手続は、申請内容や会社の状況によって審査期間が変わることがあり、入社日までに必ず結果が出るとは限りません。
そのため、外国人材を受け入れる際には、在留資格手続の進捗、雇用契約、就労開始日、許可が下りるまでの待機期間中の取扱い等を、事前に確認しておくことも重要です。
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