外国人雇用における日本語・制度・職場ルールの理解の重要性―法務大臣政務官PT報告書から考える受入れ体制整備

はじめに

外国人雇用に関しては、やはり業務内容や在留資格手続に意識が向きやすいところです。

もちろん、外国人が従事する業務内容や在留資格手続は重要です。

一方で、外国人材を受け入れる会社では、業務内容や在留資格手続のみならず、採用後の日本語でのコミュニケーション、職場ルールや労働条件の説明、日本の労働社会保険制度の理解についても注意しなければなりません。

出入国在留管理庁は、2026年7月、外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する「法務大臣政務官PT報告書」を公表しました。

これは、2026年1月23日に取りまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」において、在留外国人やその帯同家族が日本語や日本の制度・ルール等を学習するプログラムの創設を検討するとされたことを受けて作成されたものです。

なお、今回の報告書は、現時点で直ちに企業に新たな義務を課すものではありません。

ただ、外国人材を受け入れる企業においても、外国人従業員の日本語や日本の制度・ルールの理解は、採用後の労務管理・職場環境整備として重要な視点です。

日本語や制度・ルールの理解は、労務管理・職場環境整備にも関わる

外国人材を雇用する会社にとって、日本語や日本の制度・ルールの理解は、単に生活上の支援にとどまるものではありません。

職場での円滑なコミュニケーション、業務指示の理解、安全衛生上の注意事項の確認、労働条件や就業規則の理解にも関係する事項です。

例えば、賃金、労働時間、休憩、休日、休暇、社会保険、労働保険、退職時の手続等について、会社側は説明したつもりでも、本人が十分に理解できていなければ、認識のズレや後にトラブルに繋がることがあります。

また、職場のルールや相談窓口が伝わっていない場合、体調不良、ハラスメント、労働時間、休職等の問題が生じたときに、適切な対応に繋がりにくくなることも考えられます。

そのため、外国人材の受入れにあたっては、職場のルールや労働条件等について、本人が理解できる体制づくりが大切です。

通訳・翻訳だけで十分とは限らない

外国人材への説明において、通訳や翻訳を活用することは重要です。

雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、社内ルール等を本人が理解しやすい形で説明するためには、必要に応じて多言語対応を行うことも有効です。

ただし、通訳や翻訳を行ったからといって、労働条件や職場のルールの意味が、本人に実質的に伝わっているとは限りません。

例えば、年次有給休暇、残業代、社会保険料の控除、退職時の手続等は、日本で働くうえでは基本的な事項ですが、制度の背景や実務上の意味まで含めて理解するには、単なる言葉の置き換えだけでは不十分な場合があります。

そのため、外国人材を受け入れる会社では、必要に応じて通訳・翻訳を活用しつつ、労働条件や職場ルール等に関して、本人に実質的に伝わるよう、説明や周知の方法を工夫することが求められます。

入管庁公表資料で示された方向性

今回公表された資料では、「日本語・生活学習プログラム(仮)」の創設に向けた検討のポイントとして、日本語学習と生活学習を組み合わせたプログラムの方向性が示されています。

報告書本体でも、日本で中長期間生活しようとする外国人が、責任ある社会の一員として行動できるよう、日本語や日本の制度・ルール等に関する知識の習得を促すプログラムの在り方が検討されています。

また、法務省が公表している法務大臣の記者会見の概要でも、報告書について、国の責任において、入国前から幅広い外国人が学習できる体系的なプログラムを提供する方向性を示したものと説明されています。

企業としても、この報告書を、外国人材の受入れにあたり、労務管理や職場環境整備について改めて確認するきっかけとして捉えることができます。

在留資格手続の場面でも日本語能力等が問題となることがある

近時は、在留資格手続の場面でも、日本語能力等の確認が問題となる場合があります。

例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」については、2026年4月15日以降の申請から、カテゴリー3又は4に該当し、日本語能力等の言語能力を用いた業務に主に従事する場合には、日本語能力等に関する証明書類等の追加提出が必要とされています。

今回の「日本語・生活学習プログラム(仮)」に関する報告書と、この「技術・人文知識・国際業務」に関する取扱いに関して、同じ制度として整理されるものではありません。

しかし、近時の外国人受入れに関する議論や在留資格手続の場面では、日本語能力や日本の制度・ルールの理解が重視されつつあることは、企業側でも意識しておきたいところです。

外国人雇用は、在留資格手続だけでは完結しない

外国人雇用では、在留資格手続が完了すれば、それで受入れが終わるわけではありません。

採用後には、労働条件の説明、就業規則や職場ルールの周知、社会保険・雇用保険の手続、労働時間管理、休暇取得、ハラスメント相談、休職・退職時の対応等、通常の労務管理と同様に確認すべき事項があります。

外国人材の場合には、これらに加えて、日本語での理解が難しい部分や、日本の制度・職場慣行に慣れていない部分をどのようにサポートするのかも問題になります。

会社としては、次のような点を確認しておくことが考えられます。

・労働条件通知書や雇用契約書の内容を本人が理解できているか
・賃金、労働時間、休日、休暇、社会保険・労働保険等について説明しているか
・就業規則や職場のルールをどのように周知しているか
・業務指示や安全衛生上の注意事項が伝わる体制になっているか
・困ったときに相談できる窓口や担当者を明確にしているか
・在留資格上認められる業務内容と実際の業務にズレがないか

このような確認は、単なる親切や生活支援にとどまるものではありません。職場内のコミュニケーションを円滑にし、労務トラブルを予防し、外国人材が安定して働くための職場環境整備にも繋がります。

おわりに

今回公表された報告書は、「日本語・生活学習プログラム(仮)」の創設に向けた検討課題や留意事項を整理したものであり、現時点で企業に新たな義務を課すものではありません。

しかし、外国人の受入れにおいて、日本語や日本の制度・ルールの理解が重要な課題となっていることは確認しておきたい点です。

外国人雇用において、在留資格手続、雇用契約、労務管理、職場ルールの説明・周知等を切り離して考えることはできません。

採用前の業務内容の整理や在留資格手続の確認のみならず、採用後に本人が労働条件や職場のルール等を真に理解し、安心して働ける体制を整えておくことが肝要です。

【参考】
出入国在留管理庁「外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する『法務大臣政務官PT報告書』

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就労系在留資格の申請では、業務内容の整理だけでなく、雇用契約や労働条件など労務面の確認も重要になることがあります。

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